2008.02.02 (Sat)
Stray Cats 【1】 (MIOさん お宝SS)
「…ミネルバに、帰りたくない」
ぽつりと零れた言葉は、アルコールのせい。
頭の芯は、どれだけ飲んでも冷めてはいたのだけれど…。
でも、嘘じゃないの。あそこには帰りたくないの…。
だから――。
アルフィンは、自分の肩を抱き寄せる大きな手に目をやった。
(よく、似てる)
初めて、気がついた。
(ケンの手って、ジョウの手に似てるんだ…)
そこは、アラミスから程近い、とある惑星。
アラミスへの中継地点として、多くのクラッシャーが立ち寄るので有名な星である。
大きな大陸が幾つもあり、その殆ど全てが埋蔵量豊富な産油地だった為、多くの宇宙船が寄港するのだ。なかでもクラッシャー達はこの星にとって大得意客であった。多少の調整はしつつも、アラミスと同じく銀河標準時間を採用している為、クラッシャーにとっては体の負担が少ないというのも魅力である。
ケンが所属するクラッシャーチームも、給油の為その星に立ち寄っていた。出発は明日の朝ということで、英気を養うべく宇宙港からすぐの首都にチーム皆で繰り出したのだ。
味と量を兼ね備えた気易い店で夕食を済ませた後、ケンはいつものように河岸を変えて二次会に突入するものと思っていた。が。何やら他のクルー達は、目配せをして頷きあっている。微妙な空気が漂う。
一番ケンに年の近い先輩クルーが、わざとらしい咳払いを一つしてからケンを誘った。
「その、俺達女買いに行くけど、お前も来ねえか?」
なるほど。妙な雰囲気の訳はこれか。ニヤッと片頬だけで笑い、ケンは答えた。
「俺は遠慮しときますわ。なんせまだチェリーボーイなもんで。初物は大事にせなあかんて、お母ちゃんにも言われましてん」
勿論大嘘で、そんな事はクルー達にも判ったが、いけしゃあしゃあと言ってのけるケンの様子に皆が一斉に吹き出した。おかげで、ケンは無粋者と嫌がられずに、クルーと別行動を取ることが出来たのであった…。
男社会ではこのような場合、一人だけ離反するという事が実は相当難しい。まるで通過儀礼のように「同じ事をしろ、でないと仲間とは認めないぞ」と無言のプレッシャーが掛かるのだ。
無論、ケンにもそれは判っていた。それを踏まえて尚、気が乗らなかったのだ。
それなりに経験はして来た。女を買った事も無い訳ではない。楽しいと思った事もあった。
けれど。金で手に入れた肌に本当の意味でその血が燃えた事など、一度も無い。
事後に漂う寂寥感に見合う快楽を手に入れた覚えなど、ケンには無かったのだ――。
一人、ケンは繁華街を歩いていた。
船に戻っても良かったが、それも何となく気が進まず、結局飲みに行く事にした。
もう少し歩けば、馴染みのバーがある。
(フランキーでもおらへんかな)
そこは、クラッシャー達がよく立ち寄る店だった。
(あいつおったら、楽しく飲めるやろ)
いまや120万を数えるクラッシャーといえど、滅多にいない――というか、
あれほど明確にカミングアウトした者は他にいない――ド派手なおかまクラッシャーのフランキー。
ケンとは、もう随分と長い付き合いになる。
ざっくばらんなようでいて、本当の本音を滅多に明かさないケンにとって、相手との距離や空気を読み取るのが絶妙に上手いフランキーは、実に居心地のいい話相手なのだ。
ぼんやりと、ケンは思う。
(フランキーとチーム組んだら、どないやろなぁ…)
今のチームに不満がある訳ではなかった。リーダー始め、仲間達は皆気のいい人間ばかりである。仕事ぶりも誠実で信頼出来る。
なのに。
いつの頃からか、ケンの胸奥に誰かが執拗に囁き続けるのだ。
――チガウ。オ前ノ居場所ハ、ココデハナイ――と…。
(…あかん。なんや、ダウナーやわ。チャージせなあかんがな)
そして。ケンは、その店の扉を開けた――。
外目からは判らない、割合に広い店内をざっと見回す。粋なジャズナンバーが静かに流れ、ざわめきと紫煙をゆるやかに攪拌している。
残念ながら、フランキーの姿は無いようだ。しかし――。
(…!)
「悪いな兄さん。このコ、俺のツレや」
片手で頭を支え、突っ伏しそうな体をようやく保っているのだと遠目からでも判るアルフィンに、どこかの男がしきりに話しかけているのをケンは目撃した。
(何やっとんのや、ジョウは)
一つ舌打ちをして、大股でアルフィンのいるボックス席へとケンは近付き、気恥かしいくらい下心丸出しの男を威嚇した。
不愉快そうに男が顔を上げて、何やら抗議をしようと口を開きかけた時、アルフィンがひどく弱々しい声で言った。
「ケン…?」
億劫そうに上げたその顔は、目の縁がうっすら赤くなっている。表情も緩い。やはり相当酔っているらしい。
「せや、俺や。悪かったな、一人にして」
そう言うと、ケンはアルフィンの隣りにどっかりと腰を下ろした。
テーブル越しに向かい合わせに座っていた男を、心持ち顎を上げ、見下ろすように睨み付ける。片眉を、くっと上げる。
「………」
肉食獣が狙いを定めるかのようなその迫力に、相手の男は心底縮み上がり、何やら呟きながらも大人しく席を離れて行った…。
男が去った後、ケンは席を移動してアルフィンの正面に座った。
「ジョウは?」
一言だけケンが尋ねると、アルフィンは小さくかぶりをふった。それだけで大方、察知する。 注文したバーボンが来ると、ケンはもう口を開かなかった。
ロックグラスを五本の指で吊すように持ち、氷が奏でる涼やかな音を楽しむよう、ゆっくりと回している。
その眼はずっと、琥珀色の液体ばかりを見つめ続けている…。
かなり酔っているとはいえ、段々とアルフィンは、居心地が悪くなって来た。
アルフィンの知るケンは、とても陽気で饒舌な男だった。
ジョウの同期であるケンは、会う度ごとにアルフィンを褒めそやし、二言目にはデートに誘う。例え、ジョウの前だとしても全く気後れすることなど一切無く――。
「…いつもと、違うのね」
たまらず、アルフィンの方から沈黙を破った。
【2】へ
テーマ : 自作小説(二次創作) - ジャンル : 小説・文学
あだ |
2008.02.03(日) 16:52 | URL |
【編集】
な、なんと!MIOさんこんな隠れた(?)才能をお持ちとは!あ〜、早く明日にならないかな・・・続きが待ちきれません。
それに、あださん、以前「絵は得意ではないので・・・」とコメントをいただきましたが、嘘つきだ!なんですか、あの素敵な絵は!
みんなすごすぎる!
今月に入って、またCJ熱が再び燃え上がり、浮き足立っています。
それに、あださん、以前「絵は得意ではないので・・・」とコメントをいただきましたが、嘘つきだ!なんですか、あの素敵な絵は!
みんなすごすぎる!
今月に入って、またCJ熱が再び燃え上がり、浮き足立っています。
しようと思い立ったワケがわかっていただけますでしょ?>みなさま
この作品を私のフォルダに仕舞いっぱなしは、ザイアクですよね?何が何でも公開せねば〜!の勢いでした(笑
>とむさん
体調はもう回復なさいましたか? 看病からずっと大変でしたね… お疲れ様です。
プレオープン、MIOさんに丸投げのダメ館主っぷりですが(^^; こちらを開いて初めてSSをお客様から頂いたので、舞い上がっておりました。(ん?? ・・・・・・ひょっとして、SS自体頂くの、旧館から数えてもは、初めてかも。うわあああ〜、どうしましょう←記憶を探っている)
流れるように展開するMIOさんの筆に酔いしれたいと思ってます! よければご一緒して下さいv
とむさんの連載の続きも、ゆっくりお待ちしております!
>○○○○さん
いつも拙作&当館にコメントありがとうございます!
そしてプレオープン遭遇おめでとうございます(?)
お導きですかねえ〜、やっぱ。
寒い二月を幸せに過ごせそうというお言葉、MIOさんにしかと伝えますよ!ご来館を心よりお待ちしております。
>MIOさん
自分の書いた話には絵心が、、、というところで思わず笑ってしまいました。あるあるある、とクイズ百人に聞きました的突っ込みしたくなります(汗
私もそうだなあ・・・ なんででしょう。
告知絵は色んな意味でイタイ仕上がりなので、晒すのもアレかと思ったのですが、、、枯れ木も山の賑わいということで(?)御容赦願っておりましたデス。で、できればリベンジしたいなあ〜〜〜(遠い目)
この作品を私のフォルダに仕舞いっぱなしは、ザイアクですよね?何が何でも公開せねば〜!の勢いでした(笑
>とむさん
体調はもう回復なさいましたか? 看病からずっと大変でしたね… お疲れ様です。
プレオープン、MIOさんに丸投げのダメ館主っぷりですが(^^; こちらを開いて初めてSSをお客様から頂いたので、舞い上がっておりました。(ん?? ・・・・・・ひょっとして、SS自体頂くの、旧館から数えてもは、初めてかも。うわあああ〜、どうしましょう←記憶を探っている)
流れるように展開するMIOさんの筆に酔いしれたいと思ってます! よければご一緒して下さいv
とむさんの連載の続きも、ゆっくりお待ちしております!
>○○○○さん
いつも拙作&当館にコメントありがとうございます!
そしてプレオープン遭遇おめでとうございます(?)
お導きですかねえ〜、やっぱ。
寒い二月を幸せに過ごせそうというお言葉、MIOさんにしかと伝えますよ!ご来館を心よりお待ちしております。
>MIOさん
自分の書いた話には絵心が、、、というところで思わず笑ってしまいました。あるあるある、とクイズ百人に聞きました的突っ込みしたくなります(汗
私もそうだなあ・・・ なんででしょう。
告知絵は色んな意味でイタイ仕上がりなので、晒すのもアレかと思ったのですが、、、枯れ木も山の賑わいということで(?)御容赦願っておりましたデス。で、できればリベンジしたいなあ〜〜〜(遠い目)
あだ |
2008.02.03(日) 01:50 | URL |
【編集】
ありませんです…(;_;)
あださん、色々お手数かけますが、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
>とむさん
早速、温かいコメント有難うございます!
お嬢さん、お元気になられたようで、ホント良かったです。
ぬる〜く、無駄に長い話ですが、良かったらお付き合い下さいませm(_ _)m
え〜と、イラストはですね…。今回SSを書いてよく判ったんですが、自分で書いた話には、全く絵心が喚起されませんです(笑)!スミマセン!←予告編であださんが描いて下さった素敵絵で、すっかり満足しちゃいました!あださん、ほんっとに有難うございましたッvvv
あださん、色々お手数かけますが、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
>とむさん
早速、温かいコメント有難うございます!
お嬢さん、お元気になられたようで、ホント良かったです。
ぬる〜く、無駄に長い話ですが、良かったらお付き合い下さいませm(_ _)m
え〜と、イラストはですね…。今回SSを書いてよく判ったんですが、自分で書いた話には、全く絵心が喚起されませんです(笑)!スミマセン!←予告編であださんが描いて下さった素敵絵で、すっかり満足しちゃいました!あださん、ほんっとに有難うございましたッvvv
MIO |
2008.02.03(日) 00:24 | URL |
【編集】
このコメントは管理人のみ閲覧できます
|
2008.02.02(土) 21:50 | |
【編集】
うわあいv
バレンタインまでお預けと思っていたらば。
こーんな素敵な企画がお出迎えで嬉しい限りです。
MIOさん、あださん。
ありがとうございます。
なんだかドキドキの展開ですね。
毎日楽しみにお待ちしてます!
是非イラストもつけてください〜♪
バレンタインまでお預けと思っていたらば。
こーんな素敵な企画がお出迎えで嬉しい限りです。
MIOさん、あださん。
ありがとうございます。
なんだかドキドキの展開ですね。
毎日楽しみにお待ちしてます!
是非イラストもつけてください〜♪
とむ |
2008.02.02(土) 20:57 | URL |
【編集】
ど、どうして謝るんです??
↓に脱字があってすいません、それはそれは素敵な、ですね(^^;
改めましてこのたびは素敵な贈り物を有難うございました>MIOさん
無理言ってこのように掲載させていただきまして、申し訳ありません。たいへん感謝しております。秀麗な文体にのっけからクラクラしております!
今後の展開を息を呑んで見守りたいと思いますv
↓に脱字があってすいません、それはそれは素敵な、ですね(^^;
改めましてこのたびは素敵な贈り物を有難うございました>MIOさん
無理言ってこのように掲載させていただきまして、申し訳ありません。たいへん感謝しております。秀麗な文体にのっけからクラクラしております!
今後の展開を息を呑んで見守りたいと思いますv
あだ |
2008.02.02(土) 20:34 | URL |
【編集】
す、す、すみません!
何かもう本当にごめんなさいッ!
何かもう本当にごめんなさいッ!
MIO |
2008.02.02(土) 12:12 | URL |
【編集】
こちらではお久しぶりです〜
あだちです。お元気ですか?(^^)
当館に素敵な、それはそれは贈り物が届きました。
私だけで紐解くのは勿体無いので、是非に公開させていただきたいと思います。
ということで…
MIOさん作、「Stray Cats」の連載を始めます!
珠玉のCJ二次創作をとくとご堪能くださいまし。悩殺ですよ〜〜〜!
コメント&拍手ともによろしくですv
あだちです。お元気ですか?(^^)
当館に素敵な、それはそれは贈り物が届きました。
私だけで紐解くのは勿体無いので、是非に公開させていただきたいと思います。
ということで…
MIOさん作、「Stray Cats」の連載を始めます!
珠玉のCJ二次創作をとくとご堪能くださいまし。悩殺ですよ〜〜〜!
コメント&拍手ともによろしくですv
あだ |
2008.02.02(土) 02:03 | URL |
【編集】
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でもなかなかご披露なさらない奥ゆかしさが・・・
このお話も、私だけ読んでくださいということで最初頂いたのです。(そんなの勿体無さ杉ですよね!)無理言ってUPさせて頂きました。
イラストは、、、、、下手の横好きで、数年に一度バカみたいに描きたい時期がやってくるだけです〜。あああお恥ずかしい!